(この記事は、2024年3月21日現在の情報をもとに作成しています)
こんにちは。ソーティ社会保険労務士法人です。
2024年4月から、労働条件明示のルールが変わります。
労働条件の明示事項に、新たに4項目が追加されます。
今回は、後編です。
(前編はこちら)
4つの変更ポイント
いつから、誰が対象か
②更新上限の明示義務
②の記載例
③④無期転換に関する明示義務
③④の記載例
雇用契約書作成にはポイントがある!
1. 4つの変更ポイント
今回、労働条件の明示ルールには、以下4つの項目が追加されます。
(すべての労働者)
① 就業場所と業務の変更範囲の明示
(期間の定めのある労働者)
② 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の明示
③ 無期転換申込機会の明示
④ 無期転換後の労働条件の明示
今回は、② ③ ④についてご説明します。
(①(前編)についてはこちら)
2. いつから、誰が対象か
2024年4月以降に契約締結・更新をする、
期間の定めのある労働者
※パートタイマーや契約社員、派遣労働者も含みます。
3. ②更新上限の明示義務
まずは
② 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の明示
から見ていきましょう。
なにが変わったんでしょうか。
2024年4月以降は、
「雇用契約の更新に上限があるかどうか」を明示しなければならない。
ここが、前と変わったところです。
4. ②の記載例
では、雇用契約書にはどう記載するか。
具体例をご紹介します。
<例1>雇用契約の更新上限が「ない」場合
更新上限の有無:無
<例2>雇用契約の更新上限が「ある」場合
更新上限の有無:有(契約期間は通算5年まで)
更新上限の有無:有(契約の更新は3回まで)
雇用契約書に明示するほか、
「更新上限を新たに設ける」または
「更新上限を短縮する」場合、
その理由を、「事前に」対象者に説明する必要があります。
この点は注意が必要ですね。
5. ③④無期転換に関する明示義務
次に、
③ 無期転換申込機会の明示
④ 無期転換後の労働条件の明示
を見ていきます。
期間の定めのある契約の期間が「通算5年」を超える場合に、③④の明示義務が発生します。
では、具体的に何が変わったのでしょうか。
今までと同じように見ていき・・・
ここで「ちょっと待って」と思いませんでしたか?
そうです。
そもそも「無期転換申込」ってなんでしょうか?
「無期転換ルール」による無期転換への申込のことを言います。
その権利を「無期転換申込権」と言います。
・・・まだ分かりませんね。
「無期転換ルール」とは、
・同じ会社で
・期間の定めのある契約が5年を超えて更新された場合
・本人からの申込により
期間の定めの「ない」雇用契約に変更(=無期転換)するルール
のことを言います。
さらに、
「無期転換ルール」に基づき、本人が無期転換を申込むことのできる権利を、
「無期転換申込権」と言います。
▼無期転換申込権の発生タイミング(1年契約の例です)
引用元:厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」
「無期転換申込権」が使われると(=本人がルールに則って無期転換を希望すると)、
その時点で、無期転換が成立します。
なんと、会社に拒否権はありません。
無期転換申込権が使われた時点で、会社はそれに同意したものとみなされます。
このルール自体は、平成25年4月1日からありました。
ところが、まだ無期転換ルールを知らない人も多い。
そこで、ルールのさらなる周知徹底のため、このたびの改正が行われることとなりました。
それが、
③ 無期転換申込機会の明示
④ 無期転換後の労働条件の明示
なのです。
さて、話をもどしましょう。
これをふまえて、あらためて 今回の変更事項を見ていきます。
期間の定めのある契約の期間が「通算5年」を超える場合(=無期転換申込権が発生した場合)に、以下の明示義務が発生します。
つまり、いよいよ無期契約に変更するチャンスを得た従業員に、
「あなたには無期転換申込権がありますよ」
「無期転換後の労働条件はこうですよ」
と本人に伝わるように記載することが、ポイントです。
6. ③④の記載例
では、雇用契約書にはどう記載するか。
具体例をご紹介します。
期間の定めのある契約の期間が、通算5年を超える場合(=無期転換申込権が発生した場合)は、以下のように記載します。
本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日(○年○月○日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。この場合の本契約からの労働条件の変更の有無( 無 ・ 有(別紙のとおり) ) |
引用元:厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」
「労働条件の変更の有無」は、ない場合は「無」、ある場合は「有」と記載します。
変更がある場合は、変更箇所のみ別紙に記載し、雇用契約書とあわせて交付するのが一般的です。
7. 雇用契約書作成にはポイントがある!
今回の改正で、雇用契約書の書き方が変わりました。
雇用契約書への明示は、
・労使間のトラブル回避
・本人にわかってもらうように記載すること
・・・など、ポイントがいくつもあります。
迷ったら、ぜひソーティにご相談ください!
厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」